一『九十九』

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   * * *  昼休みになると智はすぐにマナーモードにしてある携帯に着信がないかチェックする。  普通ならマナーモードでもバイブレータ音がすれば着信はわかるが智はバイブレータを外してのマナーモードにしている。その為、学校ではマメに携帯の着信チェックをしている。 「……」  携帯の着信ランプが点滅し、折り畳み式の携帯を開くとメールマークが待ち受け画面に出ていた。 「……」  無言でカチカチとキーを操作して新規着信メールを開く。 「……『令』がきてる」  一言呟いた後、すぐに携帯を閉じ、昼食を一緒に食べる約束をしていたクラスメイトの元に弁当を持って急いで智は向かった。  * * *  放課後、いつもなら智は帰宅部だからすぐに家に帰るが今日は違った。 「愛流先輩、玲菜せ……お姉さま」  『先輩』と言おうとしたが、朝の玲菜を思い出しすぐに智は言い直した。  朝、一緒に登校した先輩二人を智は校門の所で待っていた。 「や、智ちゃん。見事に私達に『令』が下ったねー☆」  カラカラと笑いながら愛流は言う。 「何を笑っていますの、天見さん! 『令』が下ったんですわよ! もう少し緊張感を持たれてもらわなければ困りますわ!」  愛流とは反対に玲菜は『令』とやらが下ったことでピリピリとなり、ヒステリック気味な口調になっている。
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