30人が本棚に入れています
本棚に追加
ここで一旦、智の家の家族構成を説明しておく。父親、母親共に健在、兄弟は上から「孝兄」こと孝之、次男は兄弟中温厚で影の薄い義之(よしゆき)、続いて双子の忠之(ただゆき)、信之(のぶゆき)、そして一番末っ子が智となる。ともかく少子化と言われる世の中での五人兄弟である。
「「いただきまーす!」」
一人例外を除いて家族全員が揃っての朝食で滝沢家の毎日が始まる。
――そして食卓は戦場と化した。
この食卓にいる者は食べ盛りの時期の者ばかりである。すぐに食卓に並べられたオカズやお代わりの為に炊きためられたご飯はあっという間に無くなってしまった。
母親を除いた兄弟達は競いあったり、罠を仕掛けたり、隙をみてオカズを自分の平皿に取っていった。まさに、弱肉強食の縮図であった。
「ご馳走さま」
一番最初に一番オカズが取れなかった智が食べ終わった。
「なんだ、智。もう食べないのか?」
「智、もしかして足りなかった? だったらお兄ちゃんのをあげるよ?」
「智~。そんなに小食だと昼まで持たないぞー」
「そうだぞ、智~。朝練したんだろー」
長男・孝之を皮切りに次々と他の兄弟達が智の食べた量が少ないと言う。上の四人は何だかんだ言っても末っ子の智が可愛いから心配しているのだろう。
智にとっては朝から小姑のようでうるさいこの上ないが――。
最初のコメントを投稿しよう!