一『九十九』

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「朝から兄(にい)達、うるさいよ! 僕はちゃんとバランスとか考えて取ってるんだから、兄達とは違って!」  口うるさい兄達に一喝したあとすぐに智は自分が使った食器を持って台所へ。残った四人の兄達の反応は 「智……」 「あの純粋な智が口答えなんて!」 「智が反抗期だ!」 「智が義兄(にい)泣かした!」  次男・義之が智の反抗に泣いたらしい。どれだけ智を溺愛しているのか――。  だが、これが滝沢家の朝の恒例の風景である。  * * * 「とーもちゃーん☆」  朝から元気に智を呼ぶと同時に智を後ろから抱きつく人物。 「……愛流(あいる)先輩は朝から元気ですね」 「ん~? 智ちゃんは朝から元気ないね~? あっ! またお兄ちゃん達?」 「わかっているなら察して下さいよ」  溜め息混じりに智は言う。だが、智の先輩・天見(あまみ)愛流は基本的には「空気を読まない」人物であるから、さっさと自分ペースで話を切り替えていく。 「で、智ちゃん」 「……僕への労りはないんですか」 「? 何か言った?」 「いえ、何も。話を進めて下さい」 「うん、じゃあ、そうさせてもらうね☆」  この天見愛流は言動だけでなく服装からも変わっていることがうかがえる。
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