一『九十九』

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 智と愛流の通う高校は基本的に服装は自由な学校であり、制服というものがない。その為、生徒達は思い思いの服装をしている。あるものは中学時代の制服や他校の制服、なんちゃって制服など、もちろん普通に私服で通学して来る者もいる。  だが、天見愛流の服装は他の者の追従を許さないかのようにかなり個性的であり、下手したらコスプレとして認識される格好である。  ちなみに今日の格好はセーラーワンピに両側に羽がついているリュックである。 「でね、智ちゃ……」 「そこー! お待ちなさい!」  再び智の後ろから朝から元気がよく、お嬢様口調の声がした。  この声の主は智では対応仕切れない天見愛流と普通に渡り合える人物であるが、愛流同様に個性が強い。 「おはよー☆ 玲菜(れいな)ちゃん」 「おはよー☆、じゃないですわよ! 天見さん!」 「むー、天見さんじゃなくて愛流だよー!」  玲菜こと上ノ宮(うえのみや)玲菜に名字の方で呼ばれたことに愛流はむうと頬を膨らませて玲菜に訂正を促す。愛流は名字で呼ばれるのが嫌いのようだ。 「おはようございます、玲菜先輩」  玲菜が智の方に顔を向けたので挨拶をする。 「智、もう一度言ってもらえるかしら?」 「え?」  智は普通に挨拶をしただけなのだが、玲菜は急に恐い顔になった。
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