一『九十九』

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「え、あ、あの、おはようございます、玲菜先輩――」  玲菜に気圧され智は再度挨拶の言葉を口にする。 「……ち、違うでしょ、智! 玲菜『先輩』じゃなくて、玲菜『お姉さま』でしょ!」  玲菜は智の肩をガッシリと掴み、強迫するように言った。 「はい、もう一度やり直し!」 「……お、おはようございます、玲菜オネエサマ」  棒読みだが智は玲菜の要求に応えた。 「あう~! 智~!」  智が自分の要求に応えたのが嬉しかったのか玲菜は頬の筋肉を緩ませ、瞳をウルウルとさせて智の側面から抱きついた。  この玲菜の様子を見て愛流は智を独り占めにされたことに気付き、 「あー! 玲菜ちゃん、ズールーいー! 愛流たんも智ちゃんにスリスリする~!」 と、玲菜とは反対側から智に抱きついた。 「…………」  先輩二人に抱きつかれている当の本人、智は朝の兄達の口やかましさと先輩二人の対応にすでに憔悴仕切った表情をしていた。  だが、これも智のいつもの朝の日課の一部である。学校に着いた時には智が朝から白く燃え尽きて机に顔を伏せている光景が智の教室で見られる。
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