~プロローグ~

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長閑な町があった 誰が見ても長閑だと言うほど長閑な町があった まだ朝も早く、誰もいないのに小さな声が聞こえる 空き巣だろうか? 「290…291…」 その家の部屋に、少女がいた いや、男だ 肩まではある黒髪、優しく、黒い目、白くシミ一つない肌、少し華奢な体、整った顔立ち。女に間違われても仕方がない その人物は、片手で腕立て伏せをやっていた 「300…終わったー…」 少年は終わるとだらしなく寝転がると、ぱんぱんに張った腕を軽く揉みほぐし、風呂場へ向かい、汗を流しに行った シャワーを浴び、着物に着替えて居間に行くと女性がいた 「おはよう、カイ」 「おはよう、母さん」 カイと呼ばれた少年は微笑みながら言った ここは居酒屋、カイはそこで母と店をやっている ただ、問題なのは 「母さん…今日はや 「何言ってんだい、あんたはここの看板娘なんだから!」 カイはがっくりと肩を落とした 「だから…僕は男だってば!いつまでも女扱いしないでよ!」 そう、ここの風習と顔つきのせいでカイは女扱いされ続けている ここでは、成人になるまでは全員振袖を着るということが義務づけられている 当の母はそんなことを気にせず、どうせなら女になれと言う始末 少し可哀相である カイは可愛い溜め息をつき、店のカウンターに向かっていき、外に出た 外にある看板を回す 『営業中』 カイの1日が始まった さほどたたずに数人の男性が入ってきた いつもカイを目当てにくる人達だ 「カイちゃーん、おはよー」 「会いに来たよー」 この男達はカイが男とは知っているが、男と思っていない。その結果 「ひゃあっ!?」 触られた 「はっはっは、いいねえ!」 「だから!僕は男ですってば!…ひゃあっ!」 また触られた 「男には思えないねー」 「いい加減にしてください…殴りますよ?」 涙目で言っても説得力がない 「そういえば、カイちゃんは今日のアレ見るの?」
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