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シュルスとの別れ
それからはいつまでも幸せな日々が続く・・・・・筈だった。ところがシュルスの服。髪、顔色などが日に日に色褪せてきたのだ。トムがいくら体調のことを尋ねてもシュルスは大丈夫の一点張りで真相を話そうとせず、それでトムの心配は益々募った。
そしてある日、シュルスが話があると切り出した。
「私はもう行かないといけません。」
そしてシュルスは小さな宝石箱を取り出すと、そこに涙の一滴を落とした。涙は丁度宝石箱に収まり、つるつると滑るのがトムに見て取れた。そして、シュルスが宝石箱をトムに渡した。
「この私の涙は、触れるものすべてを宝石にします。ただ、決して触らないでください。」
事実、宝石箱も、凍りつくようにしながらダイヤモンドと化していっている。
トムが顔を上げると、頬に涙を伝わらせているシュルスがダイヤモンドへと化していっている。体中が凍りつくように。
「さようなら。」
一言言うと、シュルスのダイヤモンドの身体は砕け散って、無数の欠片が床に落ちた。トムは膝をつくと、唖然とした表情でダイヤモンドの欠片を見つめた。そんな彼に、空中から声が降ってきた。
「悲しまないでください。私は死んでしまったのですから。妖精はいつか森に戻らなければならないです。だからせめて、その涙を私だと思って大事にしてください。あなたと過ごした日々を、私は一生涯忘れません。・・・・・さようなら・・・・・」
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