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―飢群の山道―
餓鬼巣くう道は、名とは裏腹に存外美しい場所だった。
深緑の木々が不規則に立ち並び、山道に濃淡の色彩をつくる。
それを、枝葉の間から零れる陽光が、所々黄金のまだらに染め上げて、さながら一葉の絵のように仕上げていた。
しかし、いつまでものんびりしている訳にもいかないだろう。
「なあ、もうちっと早く歩いてくれないと、村に着く前に日が暮れちまうぜ」
振り返り、どこかふらついた足取りでついてくる男に向けて言う。
さっきよりも数段ずたぼろかつ黒焦げになったオリオールが、こちらへ恨みがましい視線を投げて寄越した。
「なんだよ。亜獣から助けてやったのに」
「禁術で僕もろとも吹き飛ばしておいてその言い種かい……?」
「……あれはよく生きてたと思う」
感心して言ったのだが、なぜか犬歯を剥き出して唸り声をあげるオリオール。
まあ、どうだっていいや。
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