―こんにちは―

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憂鬱。 彼女の居ない世界なんて。 何の意味も成さない、くだらない。 くだらない授業、くだらない教師、くだらない生徒。 月神一族と知れば頭を下げ、上に見ることを意識して同じラインには誰も立とうとしない。 あぁ、なんてくだらない世界。 何事もなく過ぎていく日常に飽き飽きする。 チャイムが授業の終わりを知らせる。 同時に立ち上がると、高等部の校舎へと向かう。 そこには愛しい人が待っているから。 「あ、春兄!じゃあね、また明日!」 周りの生徒に別れを告げる。 それは自分を見つけたから。 すぐにその瞳に自分を捉える。 「ありがとう、迎えに来てくれて。帰ろ!」 その笑顔が変えてゆく。 真っ黒な、この薄汚れた世界も、何より。 睦月咲春と言う、一人の人間の人生を。
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