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「…俺に用があるなら正面から来れば良いものを…っ!」
睦月咲春は舌打ちをしつつ手には爪が食い込む程の力を込めた拳があった。
相手の目的、何処(ドコ)に居るのか、殆どは分かっている。
―が、動けない。
星が危ない状況なのも分かっているのだ。
それでも。
自分が行くことで更に星への危険性が高まる恐れがある。
そして。
「良いか、月神一族は睦月がなくなったら成り立たねぇ」
神無月幾年(カンナヅキ イクトセ)。
つまりコイツが言いたいのは、月神一族を危険に曝(サラ)してまで星を助けに行きたいのか、ということ。
のこのこと行って、相手が何も仕掛けていない訳がない。
必ずこちらを陥れる為の罠がある。
睦月が無くなれば国を支える一族、月神一族は一瞬にして姿を消す。
その後の国は崩壊寸前にまで陥るだろう。
「…行って来る」
無情にも咲春から放たれた言葉は国を捨て、一人の少女を救うことを選んだ。
現在咲春が居るのは大学の一室で、大きなものを動かすことは避けたい。
だから咲春は、自分で動くことに決めたのだ。
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