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「星(ホシ)、こちらがママのお友達の桜花(オウカ)さんで、この子は咲春(サキハル)君よ?…まだ難しいかしらね」
フフッと女性は笑う。
女性の隣にはまだ立てる様になったばかりの女の子が母の服を握っている。
可愛らしい顔立ちの女の子は咲春と呼ばれた少年を見た瞬間、目に涙を溜める。
母親が抱き上げれば涙は溢れだし、声を上げる。
「ふぅ…、うぁー!ふわぁぁぁん!」
「あら、どうしたの?星」
星と呼ばれた少女は声を上げる。
母親は困った様にあらあら、と言う。
「咲春が怖かったのかしらねぇ?」
女性、桜花は笑みを溢しながら言う。
咲春は無表情で桜花の言葉には何も反応しない。
昔から子供が好きなことをしても、玩具を与えても、クスリとも笑わない子供だった。
家族では群を抜いて優秀だったが、感情が欠落しているに近かった。
そんな彼が、女性に歩み寄る。
「…貸して」
両手を伸ばす。
星の母親は一瞬遅れて反応し、腕の中の星を渡す。
桜花もこの状況に声も出せず、ただ驚く。
「…悪かった、御免な」
今度こそ桜花は声を失った。
―笑った。
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