第三者からの睦月咲春

3/4
前へ
/26ページ
次へ
近くの書類から手を出す。 小難しい言葉が羅列されていて、正直頭が痛くなりそうだ。 それをこいつは淡々と終わらせる。 表情一つ変えずに。 俺は思わず眉間に皺を寄せる。 普通の人が表情を変える物事に睦月は無表情。 これが小さい頃かららしく、そのせいで昔から一線引かれた関わり方をされていたらしい。 『らしい』というのは、睦月とはそこまで昔の付き合いではないから。 初めて会ったのは小学校の高学年。 今の『らしい』というのは全て睦月の母から聞いたものだ。 睦月の両親は睦月と違って表情豊かな人で、それもあって最初は睦月の存在に目を剥いたこともあったそうだ。 で、そこに現れたのが『星』って訳だ。 初対面の星に睦月は何かしらの感情を抱いたという。 睦月の母は『これだ』と思い、二人を婚約者にした。 まだ睦月が七歳で星が二歳になる前って聞いたな。 星と出会った後の睦月しか俺は知らないが、睦月は星と居るときだけは、どこか雰囲気が穏やかになる。 星が睦月に抱きついた時なんかアイツは表情崩すぜ? イヤ、まじで。 結婚したって聞いた時は月神一族全員で祝ったな。 睦月の雰囲気が柔らかくなるのは皆大歓迎。 だから星も大切にする。 勿論、大切な理由はそれだけじゃなくて。 睦月が世話して純粋に育てられた分、性格も周りを惹き付ける感じ。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

718人が本棚に入れています
本棚に追加