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近くの書類から手を出す。
小難しい言葉が羅列されていて、正直頭が痛くなりそうだ。
それをこいつは淡々と終わらせる。
表情一つ変えずに。
俺は思わず眉間に皺を寄せる。
普通の人が表情を変える物事に睦月は無表情。
これが小さい頃かららしく、そのせいで昔から一線引かれた関わり方をされていたらしい。
『らしい』というのは、睦月とはそこまで昔の付き合いではないから。
初めて会ったのは小学校の高学年。
今の『らしい』というのは全て睦月の母から聞いたものだ。
睦月の両親は睦月と違って表情豊かな人で、それもあって最初は睦月の存在に目を剥いたこともあったそうだ。
で、そこに現れたのが『星』って訳だ。
初対面の星に睦月は何かしらの感情を抱いたという。
睦月の母は『これだ』と思い、二人を婚約者にした。
まだ睦月が七歳で星が二歳になる前って聞いたな。
星と出会った後の睦月しか俺は知らないが、睦月は星と居るときだけは、どこか雰囲気が穏やかになる。
星が睦月に抱きついた時なんかアイツは表情崩すぜ?
イヤ、まじで。
結婚したって聞いた時は月神一族全員で祝ったな。
睦月の雰囲気が柔らかくなるのは皆大歓迎。
だから星も大切にする。
勿論、大切な理由はそれだけじゃなくて。
睦月が世話して純粋に育てられた分、性格も周りを惹き付ける感じ。
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