第三者からの睦月咲春

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睦月が頭を抱えていた時があった。 俺は若干驚きを隠せず、思考が停止した。 でも睦月は神無月と違って仕事が大量にある。 取り敢えず、どうしたのか訊いてみた。 「………っ」 凄く躊躇(タメラ)う感じ。 でもこうする間にも仕事は増える。 俺一人じゃどうやっても追い付かない。 「なぁ、本気でどうしたんだよ?」 徐(オモムロ)に開かれた口。 俺、絶句。 「…星に手が出せない」 「………はぁ?」 全くの予想外だった。 睦月がこんなことを言うなんて、仮定としてもなかった。 「出したいが、嫌われるのが恐い。だが、家に居る以上この感情が延々と襲ってくる。この場合の対処法を俺は知らない」 普段からあまり喋らない睦月がここまでの長文を話している。 …これは本気だ。 しかし、その内容を俺に相談されてもすんごく困る。 …ってか自慢にしか聞こえねぇよ、それ。 『嫁が超可愛くてどうしよう』 って言うのを遠回しに言ってるだけだと思うし。 なんかそれって果てしなくウザくね? いや、俺恋人居るけどさ。 でもこれが星とは性格が全然違うから参考にもならねぇよ。 「星ももう大人になる。『性教育』も習っているだろう。きっかけを探して星に受け入れてもらえ」 これしか言えねぇや。 どうやら天下の睦月様も嫁の前では只の男。 以上が神無月幾年より『第三者からの睦月咲春』、だな。
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