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「あ…あのね?今日体育が…」
星は生まれつき体が弱く、病気にもかかりやすい。
その為、普通の人より体力に差が出ている。
咲春はそれを無論知っており、極力無理は避けさせてきた。
「ただの体育なら良いんですけど、三十分の持久走なんです」
煌希が捕捉、と言わんばかりに付け加えた。
「…休め」
星に対しては異常なまでの過保護さを見せる咲春。
煌希は既に見慣れている為、当たり前の光景として捉(トラ)える。
「…ダメ…?」
「駄目だ。無理して体調を崩すのは良くない。今日は休むんだ」
「…うん、分かった。煌希、応援してるからね!」
彼女が悲しむのは、分かっていた。
それでも心配で、心配で。
彼女の行動、仕草の一つ一つに動かされる。
この感情は、知っている。
でも、彼女にこの思いは伝えられない。
彼女が苦しむだけだから。
辛い思いは、してほしくないから。
「じゃあね、春兄!」
「あぁ」
高校生と大学生では校舎が違う為、必然的に校門を過ぎれば別れなければならない。
分かっていても、どこか寂しさはあるもので。
また顔を合わせることを楽しみに過ごすのだ。
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