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しかし、私の目の前に懐中時計を持った不思議なウサギが現れることは無かった―――。
そして、気がつけば私は16歳になっていた。
『んーっ』
私は背伸びをしてパサリと草の上に横たわった。
やはり、私は不思議の国のアリスなんかじゃ無かったんだ。
不思議な事も、変な出来事も起こらないこの世界の…
現実の国の、アリス。
本当は最初から気付いていたのかもしれない。
ただ、少し夢みてみたかったのだ。
私は何か特別なものを持っているんだ…と。
『私の所には来てくれないの?
懐中時計を持った、白いウサギさん…』
静かに問い掛けてはみたけれど
そのこたえはかえっては来なかった。
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