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日本首都東京某所…
ここは、蒼空殻(そらから)高校校庭。
いつものように曽根川ひかるは、部活動のサッカーの練習に夢中になっていた。
「いっけ~!ドライブシュ~トォォ!」
ひかるの放った必殺シュ-トは、大きな放物線を描き、ゴールキーパーの手をすり抜け、ポストが白くくすんだゴールネットに吸い込まれるように突き刺さった。
「きゃ~♪素敵!」
「きゃ~♪ひかる~先輩♪こっち向いて~♪」
黄色い女子高生たちの声が、暮れかけてオレンジ色に染まった校庭に響き渡る。
そう、曽根川ひかるは、その童顔とサッカー部のキャプテンと言う事もあり、女生徒たちにモテモテであったのだ。
ひかるが、チラリと声の方を見ると何人かの女生徒たちが、声を張り上げながら手を振ってるのが見えた。
…ふっ…流石は俺…
そう思いながら、長くなった黒髪をフサッとかき上げた。
「よし!今日の練習は終わり!」
キャプテンである彼が、一言かけると今まで疎らにパス練習とかシュ-ト練習をしていた部員たちが、一斉に動きを止めキャプテンの周りに集まってきた。
そんな針の穴をも通さないほどの完璧な彼にも、ひとつだけ悩みがあった…
それは…
ひかるの周りに集まったメンバーたちは何故か下を見下すような態度をとっている。しかもキャプテンに向かって…
そう、彼の悩み…唯一の弱点は、背が低い事であった…
あぼ~ん
故にみんなからは、中坊キャプテンと呼ばれていた。
「中坊キャプテ~ン…今日はこれで終わりですか~?」
一際背が高く、体格のいい辰巳慎平が、その体型からくる低い声で言った。
ひかるは、脇に立つ辰巳にギラリと睨むと少しキレ気味に答えた。
「…そうだっつったろ!…辰巳…頼むから隣に立たないでくれ!俺が余計小さく見えるじゃねえか!」
「ご…ごめんキャプテン…」
辰巳はキーパーで、体格はデカいが気の弱い人間であった。
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