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驚いたのは自分が草の上にいることだけではなかった。周りには日本で見ることの出来た家もなければビルもない。
道路もないし車もない。
おまけに人もいない。
周りにあるものはただの草原。ちらほらと木が立ち、少し離れたところには森がある。
「や、やっぱり夢だ!は…ははは…」
口に出して言うものの、今地に足をつけている感覚、呼吸をしていること、風に当たる皮膚の感覚。それは間違いなく夢ではないと思わせるものだった。
(待て待て…落ち着け行人。オレはどうやってここに来た?………声だ!)
行人は思う、呼んでみようと。
「おい!来たぞ!返事しろ!」
………………
「なんだよ…。何も聞こえない。さっきまであんなに聞こえてたのに」
困惑していた。当然だろう。見たことのない景色。少なくとも自分が住んでいた町にはありえない景色だった。
太陽は照り、光を大地に降り注いでいた。
「暑い…。ん?暑い?何で?」
おかしい…。身につけている制服は冬服で、もう吹き付ける風は冷たい。そんな季節のはずだった。
しかし、感じている暑さは本物。夏までとはいかないが冬服を着るには暑すぎる。
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