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青い空には木の風車が映える。
俺は母さんに頼まれた子供達の服を川で洗い終え、家に戻っている途中だった。
いつの間にか俺は生まれ、この家に住み、学校に通い、こうやって頼まれた事をやっていた。
実の両親はどんな人間だかも覚えていない。
村の餓鬼共はその事で馬鹿にしてきたが、俺には生んでくれた親は知らなくても家族はいる。
俺にとって俺の親は母さんだけだし、家にいる子供達、皆が兄弟だった。
それが当然でそれが俺の普通だった。
だから村のおばさん達が『可哀想だ』と口にされる時は苛立った。
その人からしてみたら俺らは『可哀想』なのかもしれないが、それは一方的な見方だ。
俺達を見てすらない。
それは只、表面上の事実だけを眺めて、自分は哀れんだつもりのもので、単なる自己陶酔に過ぎない。
俺らの普通は俺の不幸じゃない。
近くの風車小屋が風でカタカタと軋んだ音を出しながら動いた。
おばさん達は目が合うと一瞬だけ申し訳なさそうな表情をしたが、俺が通り過ぎた途端、先程よりも嬉々として話し始めていた。
苛立つよるも半ば呆れて、風車小屋と呼ぶにはいささか無理がある大きな建物のドアを開けた。
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