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過去そして今
2歳の時父親が死んだ。
どのように死んだのかは
聞いていないが。
2歳の時だったから
俺は父親の顔を覚えていない。
ただ残ったのは
父親が身に着けていたという
黒と赤の十字架のペンダントだけ。
これは父の形見だと母から
小さい頃からなんども聞かされた。
無論、小さな子供に父親の
形見だなどと言っても
まったく理解できる訳がなかった。
その時、俺は
「カタミ」って何?
と聞いた事を覚えている。
その質問に対して母は
「父さんの思い出ってこと」
と言った。
「思い出って…父さん帰ってこないの?」
と俺は言った。
そうすると母が
悲しみを堪えるような顔で
「いつか帰ってきたらいいね」
と言った。
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