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「な、学会の人間か!?」
「元、な。今はちげーよ」
「今はフリーターだもんね」
「うっせえよっ」
横から茶々を入れられたが、気を取り直して手に力を籠める。
「十秒待ってやるよ。その間にどっか行きやがれ」
十。呟くように数字を溢す。
男はああと、何かに納得したように笑みを浮かべた。
「そうか……お前が噂の主様か」
「九」
「何でも最年少で学会入りしたがすぐに抜けたとかいう……」
「八」
「堕落した天才、とか言われてたな」
「七」
「魔法を否定したんだってな」
「六」
「馬鹿だな。科学と魔法の融合はきっと進展に繋がる」
「五」
「科学なんてな、魔法の前では何の意味も――」
「ゼロ」
重たい音が響いた。反動で腕が跳ね上がる。
風を切る音とともに走った銃弾は、男の頬と耳を切り裂いた。後ろに止めてあった車に着弾する。遅れて悲鳴が唯と人質から漏れた。冬樹は悪びれた様子も無く、切り裂かれた頬を押さえる男に再び銃口を合わせた。
「悪い、間違えた」
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