魔法の証明

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 ――これは依頼ではない。貴殿へのチャンスである。  名も知らぬ知人からの手紙の文頭にはそう書かれていた。いきなり偉そうだな、と冬樹は失笑した。 『魔法の証明。それが可能なら、学会の永久追放を免除しよう』  手紙はそれで終わっていた。実に簡素な手紙だと思う。冬樹はそれをくしゃっと丸め、ゴミ箱に投げ捨てた。残念ながらゴミ箱の淵に弾かれてしまう。床に転がった紙を冬樹の代わりに、小さな手が拾い上げた。珍しく困ったように、唯は眉を曲げて冬樹に尋ねる。 「いいの、冬樹」 「いいんだ。捨てといてくれ」 「だってこれ……」  更に眉が下がったのを見て、冬樹は一度嘆息する。  こいつが塩らしいなんて珍しい事もあるもんだな。そう思うも、原因が自分にもあるものだから、からかいの言葉は出てこない。 「いいって。学会なんてもう興味ないしな」    本音だった。  あんな所を目指して勉学に励んでいた昔の自分が恥ずかしくあった。  それでも唯は食い下がる。
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