188人が本棚に入れています
本棚に追加
このアパートの二階の一室であるこの部屋に引っ越して、まだ二日しか経っていなかった。よく自分の居場所を探り当てたもんだと思う。
未練の籠もった瞳をゴミ箱に向ける唯を急き立てながら、冬樹は手近の段ボウル箱を開いた。
昼食は外で取ることにした。まだこの辺りの地理に慣れていないため、探索も兼ねての昼食だ。ポケットに手を突っ込んで気だるそうに歩く冬樹の前を、唯がきょろきょろと興味深そうに辺り見ながら歩いている。
「ねえねえ、お昼は何食べよっか?」
「決めてねえのかよ。外が良いってあれだけ騒いでいたくせに」
えへへ~、と悪びれもせずに笑う唯にため息を一つ落とした。とても笑う気分にはなれなかったのだ。頭の中は先ほどの手紙のことでいっぱいだった。元同僚達の考えに吐き気がする。
できるはずねえだろ……『魔法と科学の融合』なんてっ。
魔法が発見されたのはまだ近年のことだ。誰が第一発見者なのかはわからない。
最初のコメントを投稿しよう!