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何言ってんだかと、冬樹は呆れた。同時にまたこいつらと関わっちまうのかと、男が付けている見覚えあるバッジを見てうんざりもした。いらつきを隠すつもりも無い物言いで、乱暴に吐き捨てる。
「学会はついに誘拐まで手を染めたか」
男たちの顔色を変えるには申し分ない言葉だった。
表情が警戒の色に染まる。男たちが何かを言う前に、冬樹は続けた。
「どうせお前ら下っ端の使いっぱしりなんだろ。手ぇ引いたほうがいいぞ、あいつ等からは」
「……博士達の知り合いか」
「残念なことにな。知り合いたくはなかったぜ」
冬樹は言いながら一歩近づく。が、腕を掴んでいない男の二人が少女との間を遮った。厳つい表情で冬樹を睨む。
冬樹は短く「どけ」とだけ言い、進む足を止めない。気は短いのだ。しかし、男たちは冬樹以上に気が短かったようだ。有無を言わなせないと言った風に、冬樹を押さえつけようと腕を伸ばした。
内心嘆息を付く。自分はそこまで喧嘩は得意じゃない。頭脳が武器の理数系の人間なのだ。
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