188人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
またこいつに頼らないといけないのかと、少しの情けなさを覚えながら冬樹はちらと横を見た。冬樹の横を風が走った。唯は冬樹の横を颯爽と通りぬけ、地を強く蹴り、低く跳び上がる。
突然現れた乱入者に男たちは何もできなかった。前に勢いよく突き出した足が、男の胸元に当たる。
「いよっし! 悪者一人退治だよっ」
唯の動きはそれで終わらなかった。振り向きながら勢い良く踵を振り上げる。横にいたもう一人の男の顎を、踵が的確に捉えた。男の身体が少し浮き、そのまま受身も取れないで倒れる。
「んで、二人目!」
足を下ろした唯はそう言ってにかっと笑った。
「……やっぱりお前女じゃないだろ」
絶対ゴリラの生まれ変わりだ。倒れた男を見ながら言う冬樹に、唯は頬を膨らませた。
「ひっどおい! 助けてあげたのにっ」
「はいはい、ありがと」
「誠意が籠もってないよ、誠意がっ」
冬樹はそれ以上返さず、最後の男の方を向いた。唯も仕方なしに、唇を尖らせたまま男の方を見る。
「さて、お前一人な訳だが……」
「なんなんだお前らは……他の研究所の奴か?」
最初のコメントを投稿しよう!