序章

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『咲夜…早く来なさい…‥早く、早くよ』  久々に訪れた快適な睡眠は、脳を直接揺さぶる愛しいその声により、あまりにもあっさりと終焉を迎えた。  けたたましく騒ぎ立てる無遠慮な目覚まし時計よりは幾分--いや、何倍もマシではあるのだが。  それでも口から思わずこぼれ落ちるため息の嵐を止めろというのは無理な願いだ。  何せ、度重なる酷務に疲労感が拭えず、使い慣れたこのベッドに雪崩のような勢いで身を委ねたのは本当につい先程の事だったのだから。  きのこ狩りにきた魔女やら、神社を増やそうと目論む巫女やら、暇と隙を持て余した千年妖怪やらの相手をしていたら休む事など出来る訳がないだろう。  せめて門番がもう少し使えれば…‥とこれ程迄に切に感じた事はない程、近頃の紅魔館は多種多忙を極めていたのだ。  「幻想郷らしい」と言ってしまえばそれまでなのだが。
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