身代わり屋

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「こいつが我が店の 目玉商品さ。 これはお前さんが望めば お前さんの代わりに、 学校に通い、塾に行き、 宿題もしてくれる。」 身代わり屋。 なるほど、そういう事か。 これが俺のつまらぬ日常を 肩代わりしてくれる。 その間、俺は自由になれる。 「…それは、その身代わりは いくら払えば良いの でしょうか。」 「いや、金はいらない。 ただで差し上げよう。 …ただし、この身代わりを 使い続けてる間は お前さんの影を利息として 少しずつ払ってもらう。」 「影…?」 「影、つまり"存在感"。 身代わりを使い続ける間、 お前さんの影は薄く なっていく。」 なんだ、そんな事か。 「"身代わり"を受け取る なら、ここに サインしとくれ。」 老人が、かすれた契約書の ようなものと、羽根ペンを 目の前に置いた。 「かまいません。」 俺は気軽に考えて、 サインした。 "影が薄くなる"。 その本当の意味も知らずに。 「確かに契約したぞ。」 老人がニヤリと笑った 気がした。
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