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「良かろう。これはお主こそに相応しいギャルゲだ。今、その願いを叶えてやる。辛い世界から逃げる手助けをしてやろうだが――」
カウンターに置いてあったパズル模様のギャルゲを手に取った黒衣の店員は、さっきの写真をそのギャルゲの上に置いて言う。
「二度と現実には帰れなくなるぞ?この娘にも二度と会えなくなるぞ?」
口元を吊り上げる店員が、何を言っているのかはすぐに理解出来た。
理解出来たから即答してやった。
「そんなの構わない。二次元にイケるのなら!!」
俺は黒衣の店員の話を信じたのだ。明らかに胡散臭い話にも関わらず、疑うことなんかしなかった。
だってこんな妄想何回もしたからな。
「ひっひっひっひっ。では、準備を始めるかの――」
俺の絶大の期待を感じ取った黒衣の店員は下準備なのか写真に息を拭きかける。
「なんだ!?」
今まで一枚の紙だった写真が店員の息がかかっただけで、パズルが崩れ落ちるかのように一ピースごと剥がれおちギャルゲのパッケージの模様へと嵌まっていく。
そしてハヅキのピースが崩れてから俺が崩れ始める。
あれ?胸の部分の三つのピースだけが光り輝いてケースの中に消えていった。
「お前の望み通りの内容じゃ。好きにするが良いぞ。プレイすれば気が付いたら二次元じゃ。ひっひっひっひっ――」
「ホントか!?ただプレイすれば良いのか?よっしゃ――」
早く帰って早速プレイだ。もう二度とこんな思いしなくていいんだな!
「忘れ物じゃ、こいつを持っていけ。そっちの世界ではそいつに助けて貰うのじゃぞ。いいか、お主が望む世界が待っているからの――」
そう言われたのが最後だった。
俺が現実で聞いた最後の言葉。
こんな怪しい婆ちゃんが最後なんて泣けるな。
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