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真夏の太陽が照り付ける市営グラウンド。
大勢の市民が最後の攻防を繰り広げている球児達を熱い声援で後押ししている。
「勇希、お前に全てを任せる。なに、心配するなお前にはこんな場面でも臆することがない勇気がある。お前と言うだけで希望が持てるんだ!!」
「最後に決めてくれよな!」
「あぁ、行ってくるよ――」
日陰にも関わらず蒸せるような熱気に包まれるベンチから、一人の球児が監督と部員達からの多大なる期待を背負って規則正しく白線が引かれた左打席に向けて歩みを進める。
――三人には本当に感謝している。
君達のお陰でここまで来れた。
見ててくれよな、お前達がくれた勇気と希望で俺は幸せを掴む――
革手を嵌める手をにぎりしめる勇希。
《さぁ、最終回ツーアウトまで追い込まれた。二塁ランナーが帰ればサヨナラ勝ちの場面でバッターはこの人だ――》
《一番、センター二ノ宮勇希くん、背番号八》
ウグイスジョウがそう告げるとアルプススタンドで地響きが起き吹奏楽と応援歌が熱唱される。
「ガンバレ…勇希…」
「……、おっしゃ!!」
そんな全ての期待を一身に背負った勇希は、一回だけ振り返り、自軍アルプススタンドでメガホン片手に両手を合わせて祈りを捧げる少女を見つめると、最後の打席になりうる左打席に躊躇う事なく入り構える。
――三人がくれた今日を俺は精一杯生きて行く、ありがとよ――
カキーン
《おーと二ノ宮打ったー。最終回、ツーアウトから起死回生の一打だ!二塁ランナー三塁を回る~》
白球が青空に飛び込む。
二年前、三人の少女が勇気も希望も無いただのオタクだった勇希を変えた。
今回はそんな少年を変えた出来事を話そうと思う。
三人の少女が教えてくれた大切な物が何かを、皆さんも探しに行きませんか?
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