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「シグレたん萌え~~」
本日は平日で太陽が昇り既に3時間は経過してると言うのに、いまだ真っ暗な部屋の中心で、俺は自分でも不気味な眼差しをテレビに向けてにやけていた。
「可愛いよ~シグレた~ん。俺の彼女になってくれ~――」
何年も太陽の光を長時間浴びていない肌を掻きむしり、テレビの横に飾られている鮮やかな装飾が施された美少女フィギュアの朧げな光に照らし出された顔を一瞬だけ見るとまた画面に声を発する。
「俺は最強!これでコンプリートキャラは二百万人だ――」
興奮した俺はボサボサな髪を激しく振りこれまたボサボサな眉毛を上下運動させ画面にくぎづけになる。
――永遠を誓った二人は熱いキスを交わし未来へと歩き出す――
そんな文字の後ろで顔が隠れた主人公らしき学生が、美少女フィギュアと同じような趣のある美少女とキスを交わしていた。
ちなみに、その本作主人公のイケメンキャラが言葉を発する場面になると、画面には二ノ宮勇希「〇〇――」なんて出てくるのだ。
「やっぱりオレ…最強だよ!これで世界の全ての美少女を制覇した!!もしかしたら、このまま三次元もイケんじゃね――」
と、エンドロールを見終える前に俺はおもむろに立ち上がり携帯を取り出す。
そして中学校のださい紫色のジャージ姿のまま携帯片手に薄汚い自室から外に出て玄関でビーチサンダルを履き久しぶりの太陽の光を浴びる。
「ま、眩しい!!あ、あ、ハヅキか?今から空き地にきてくれ!!」
一瞬だが太陽の光に目が眩んだ俺だったが、片耳に当てた携帯から女の子の声が聞こえたのを確認するとすぐに、用件も言わずに待ち合わせを要求して電話を切ってその場所へと向かうのだった。
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