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「ぜぇ…ぜぇ…――」
空き地ってこんなに遠かったか?記憶では徒歩5分でランニング程度の早さだと三分もかからないはずだ。
なのに、俺は軽く走っても10分もかかり肩を上下に何百回も動かさなければ呼吸が調わないのだ。
「あ、き、き、きた――」
そうこうしているうちに待ち合わせの相手のハヅキが空き地に入ってきた。
少し慌ててきたのか、暑そうなそぶりを見せて深呼吸をしているようだった。
やばい、あまりにびっくりしてしまい隠れてしまった。
本当にきてくれたのか…?
なんで今更きやがったんだ馬鹿野郎。あの時は来なかった癖に――。
空き地の奥にある土管の影に隠れた俺は、苔が生えたコンクリート壁を殴り付ける。
「ん?勇希…そこにいるの?何かくれてんのよ早く用件言いなさいよね。私は忙しいのよ!?あんたと違ってね」
コンクリート壁を殴った音に気が付いたハヅキが、がみがみと文句を言いながら近づいてくる。
「野球の練習抜けてきたんだからさっさとしてよ!なに謝る気にでもなった?」
ぶちっ――
その言葉を聞いて何かが弾けとんだ。
「んだとくそ尻軽女!俺はお前がずっと好きで、今日はお前を俺の彼女にするために呼び出したんだよ!」
謝る気なんかあるかよ。
「調教してやんよ!俺なしで生きてイケないんだからなお前は――」
俺は土管の上によじ登りハヅキを見下すようにし腕組みをする。
ハヅキの表情ときたら驚きのあまり目をぱちぱちさせている。
昔から幼なじみは主人公が好きと言う設定は王道だからな。
こいつも俺を好きすぎてやばいくらいだろ。
空き地のど真ん中で固まるハヅキを見下しギャルゲの経験値で優越感に浸る俺。
人間落ちるとこまで落ちると無敵になるらしい。
気持ちがな。
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