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「みんな…帰ってきたぞ……」
生気が抜けた俺は、あれから三日三晩ずっとギャルゲをプレイしていた。
もちろん学校になんかいっていない。
エスカレーター式の学校で、最低限の日数出席すればどんな馬鹿でも進級出来る学校だ。
それに中学時代に野球部で活躍し学校に貢献した俺にはみんな感謝しているから文句なんて言えないのだ。
親だって妹だって野球を辞めた事を何も言わない。こうなってからも文句の一つも言わないでしかも干渉すらしてこないのだ。
俺はそのくらい尊敬される人間なのだ。
蔑められたりなんかされない。
惨めななんて思わせない。
《ねぇ…お兄ちゃんまた泣いてるよ…パパ…》
《知らんあんなつ。勝手に野球を辞めよってこの始末か、とんだ落ちこぼれだ》
《メイちゃんはあんな風になっちゃだめよ?あんなダメ人間にね?》
《お兄ちゃんはダメ人間じゃないもん…、ミー絶対帰ってくるって言ってくれたもん!――》
《メイちゃん…ミーはね…ミーはね…。ううん、そうね、必ず病気治ったら帰ってくるわよ――》
ドア越しでもろに聞こえてくる家族の声を、俺は自分にではない他の誰かへの言葉だと受け流した。
今まで頑張って野球で親孝行してきたを息子に、あんな酷い事を言うわけない。
なんで息子より飼い猫の心配してんだよ…。メイ、ミーはもうミーはもう――。
無意識に耳を塞いでいた事に気が付いた。
今度は雑音が入らないようにイヤホンを耳に差し込み再度画面だけに集中する。
それから一週間何も口にしないでギャルゲだけをして過ごした。
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