歌姫と森

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  「ダメだッ!!僕の武器じゃまったく歯がたたない!!」    猪を叩いた木刀を持つ手が痺れる。    そこに急な方向転換をする猪の歯が迫った。   ―――ブォン!!    間一髪、手の痺れを我慢し、ライトは姿勢を縮めた。    だが、容赦ない猛獣は体制を崩し縮みこまるライトに向けて、前脚をあげた。   ―――マズイッ!!踏み潰される!!    体制を立て直す時間はない。ライトはとっさに木刀を盾にするように構えた。   「無理に決まってるでしょ!!」    声と同時に、猪とは違う方向から衝撃が来た。    レイナがとっさに、ライトを抱き抱えるようにタックルし、猪の側から離れた。    刹那、地面を揺るがすほどの威力を持った猪の前脚が、先程までライトのいた位置に振り下ろされた。   「あ、ありがとう!!今のは、ちょっとマズかったね…」   「ライトが死なれては、このクエストの意味がなくてよ…でも、ワタクシも、ハーフダメージを付けたのは間違いでしたわ…」    自身の甘さを攻めるレイナは、ライトから離れ、再び戦闘体制に入る。
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