歌姫と森

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       ―――Real    渋谷風景を忠実に再現された世界で、今日も人々が行き交う。    人間の意識をそのままバーチャル世界に飛ばす事が可能になったこの世界では、ありとあらゆる五感を感じる事ができる。    この世界が現実世界と区別出来なくなる病があるのも無理はなかった。    唯一、この世界で非現実的なのが、道行く人の姿。    厚手の鎧を着込む者や、頭に動物の耳、艶やかな尻尾を生やした人間。    それぞれが、自分に合った武器を装備している。    僕も例外ではない。    いや、正確に言えば、この世界では【私】かな?    綺麗な黒髪のショートカットヘア。 自分のメインキャラから引き継いだ初心者装備の動きやすい私服を着込んだ、一人の女の子。    控えめに膨らむ胸の重みも、全て新鮮だ。   「え…ひかる…女性PCにしたの?」    ハチ公前で僕に怪訝な態度の言葉を放った彼女は、レイナ。    僕と同じゲーマーのお嬢様。彼女とは、同じ中学に通う昔からの幼なじみである。
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