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 ――さて、どこまで話したかな? 毒の仕掛けられ方まで話したんだな。次は、毒の入手経路だ。……とはいってもお前が買って保管していた毒薬だから教える必要はないのかもしれないな。まあ、聞いていてくれ。毒はお前が趣味でやっていた園芸で使う用の農薬だ。お前が熱心に毒の性質について店員に聞いていたから、店員 は自殺した日の前日にお前が買ったということを覚えていてな、犯人がお前を殺した後、園芸用具のところに忍び込ませたという他殺説は消えたよ。逆に、園芸にこれほど熱心だったから自殺でない、という意見もあったが、より癌との苦しみが嫌だったのだろう、と結論付けた。……脇道にそれたが、とにかく、今回の毒殺未遂事 件について、毒は誰にでも持ち出し可能だったし、犯人が特定出来なかった。  ――誰なんだ? お前には誰が仕掛けたのか分かっているのだろう? 夢枕にたって、教えて欲しいよ。  とんとん。  うん? きっと、勲くんだろう。お前の弟が、世間を騒がす名探偵になるとは思いもよらなかった。 「失礼します。身体のお具合はいかがですか?」  わたしより、十年下の三原勲。今年で六十八才になる。昨晩から泊まり、今日の夜行列車で帰宅し、アメリカへ発つという。お前も知っている通り、何やらアメリカで大事件が起こり、解決を求められているらしいな。最初は、断っていたが、熱心な呼び掛けに負け、協力することになった。条件として、解決は保障出来ない。更に、三ヶ月したら打ち切るというものだったな。えらく、消極的な対応だったから、記憶に残っているよ。……。  お前は、勲くんが帰って来るまで、生きていれる自身がなかったから、確実に日本にいる今に、自殺をしてしまったのか? 「ああ、わたしの方は良くなったよ。……だが、姉さんのことについては、謝りようがない」 勲くんの表情が翳ったように見えた。しょうがないだろう。 「いえ、姉が弱かっただけです。ぼくも、最後まで病気と闘って欲しかった。馬鹿な姉です。……」  久しぶりに会ったわたしたちは、しばらく雑談をした。そして、わたしは目的である事件の真相を尋ねてみた。 「お義兄さん、止めときましょう。そういう話は。警察に任せるのが一番です。ぼくなんかがでしゃばるのはよくないです」 「何をいうか。今まで、いくつかの難事件を解決してきただろう」 「たまたまです」 「謙遜することはない」
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