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「……分かりました。ただ、これだけは覚えていてください。あくまでも、これからいうことは、ぼくの推論です。真実かどうかは分かりません」 「まあ、そうだな。わたしは勲くんの推理が聞きたいだけだ」 「それから、ぼくの推理は、犯人の意思を読み取ることから始まります。犯罪――特に殺人という行為は人間にとってぎりぎりの極限状態下で行われる、と考えています。そして、犯人が極限状態下であることを前提としているため、余裕を持って行動するような、快楽殺人者を推理することは出来ません。犯人の意思が読み取りに くいのです。遊び心――というものが混じってしまうと、真実の目的を霧に隠してしまう。……いわば、犯罪危険抑制性説――最小の危険により犯罪は達成される、という考えを採用している訳です。その点をご了承して頂きたいのです」 「ああ、分かった。ところで、勲くんの知っている事実というものは何なのだ?」 「警察が教えてくれないので、担当医に聞いてきました。それと、佳代さんからいろいろと。やはり、警察は名探偵と呼ばれる存在には好感を持ちませんので」  勲くんが笑った。お前の笑顔と重なり合う。 「あと、お義兄さんに聞きたいことがあります、既に決まっている予定を教えてくれませんか?」 何を聞いているんだろう? まあよい。  わたしは、祐子たちと別荘に遊びに行くこと、文隆にご馳走になることを話した。 「分かりました。では、ぼくが来るということを知らなかった人はいますか?」  お前が死んだんだから、弟の勲くんは来るだろうということは、みな、予想が付くだろう。そう告げた。 「ぼくが、お義兄さんの家に泊まるということは?」
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