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お前のグロテスクな姿を、気が付くと夢想している自分がいて、わたしは悩んだ。わたしはお前を愛していて、愛しているからこそ想像し、愛しているからこそおのれの欲すがままの行為が出来なかった。葛藤した。結果、別の女を欲求のはけ口にすることにした。
理解出来なかっただろう。お前との行為は淡白で、満足しきれていなかっただろう。決め付けは良くないが、別の女との経験によると、十分ではなかったはずだ。だから、お前の認識とすれば、
――あっちの方は余り好きではないのね。
こう思っていたと思う。
だのに、妾を囲っていた。その事実に気付いたお前は、きっと感じたはずだ。
――私のことを愛してくれていない。亭主は妾を愛しているのだわ。
だからこそ、お前は離婚を申し出たんだろう。
わたしは、気が狂わんばかりに反対した。有能な弁護士を揃え、絶対に離婚だけはしない、という意思をあらわにさせた。離婚を思いとどまってくれて、本当に助かった。欲求を満たすことは出来ないけれども、それでもお前を独占しておきたかった。……。
さて、今晩の通夜の準備でも始めるか……。
うん? おかしい。身体が動かない。どうしたんだ。だ、駄目だ――。
「死ぬ……の……か」
けれども、お前の目の前で死ねて、良かったかもしれない。
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