55人が本棚に入れています
本棚に追加
「いらしゃいませ。」
半分寝ているような店員の声が聞こえる。
「さて、どれにするか……」
朝に何を食べるかはその日の気分で決める氷槍は、パンエリアから「朝に強い!栄養パン」とストレートティーをカゴに入れ、レジに持っていった。
「失礼します。お客様。貴方は学生ですか?」
本当に失礼だな。と思いながら、そうです。と氷槍は頷く。
「一応、確認させていただきます。」
そう言うと店員は何やら液晶パネル式の小型機械を取り出し、カメラらしき部分から氷槍の顔を映す。
「確認しました。十五才ですね」
そう言って店員はレジに数字を打ち込み、商品の値段を下げる。
今の機械は、対象にかざすだけで年齢が解るようになっている。本来は、未成年者に煙草やお酒を売らないように作られた物だが、今のように「学生割引」等でも活躍するので、ほとんどの店に配置されている。
代金の支払いを終えた氷槍はコンビニから出て、ある場所に向かった。
その『ある場所』とは、数日前、謎の殺人事件を報道した大きな液晶テレビのあるデパートの向かい、七階建てのビルの屋上だ。
「………」
氷槍は屋上にあるベンチに腰掛け、パンにかじりついた。
「………不味ッ!!」
栄養パンなんてネーミングの時点で気付いたら良かった。と彼は心の中で呟く。
氷槍はパンを袋に戻し、ストレートティーに口をつけた。
「……………甘ッ!!」
間違えてアップルティーを買ってしまったと朝から嘆く氷槍であった。
最初のコメントを投稿しよう!