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「ひっ!ひぃぃぃぃ!」
雨が降る夜の路地裏を、男が走っていた。
体型からして二十歳後半のその男は全身に防弾装備、手にはサブマシンガンと、容姿だけでも一般人でないことが解る。そんな彼はその装備の存在などさも忘れたように走っていた。
…この街には、このような防具を着けていても敵わない者がいる。
超能力者。
色々な力を持ち持つ者により性能が変わる。かの赤い機体も通常の三倍と有名だが、実際機体の性能は1.3倍程度、そこに赤い彗星というパイロットあっての「通常の三倍」なのだ。つまり、超能力も同じ。同じような能力を持っていても、個人個人のスペックですべて変わるのだ。
「はぁ…はぁ…やっと撒いたか…」
男から安堵の息が漏れる。
「まさか、これで楽しい鬼ごっこは終わりかい?兄さんよォ!!」
「なっ…!!」
男の居る位置から数メートル位先にその声の主は立っていた。
漆黒を具現化したような髪、時折見せる白い犬歯、そして何より鮮血な血の色の目。
氷槍。
少年はそう呼ばれている。
「くっ!……くそっ!!」
ジャキッ!っと鈍い機械音が鳴り響く。ついに男が銃を構えたのだ。
「こ……ここで死んでたまるかぁぁぁ!!」
ガガガガガ!!
男は狙いも定めず闇雲に打つ。
しかし、少年は傷一つつかない。
…否、何かに拒まれたように銃弾が地面に落ちていた。
「………!?」
「なんだァ?もう終わりか?ったく、つまんねぇなぁ!!」
突如、少年の手から氷で出来た槍が出てくる。
「…これで終わりだな。」
「ま…待ってく……」
ズシャァァ!!
その直後、路地裏は男の血で紅く染まった………
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