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オーストラリア大陸程の大きさの街、リディア・アイランドの一角、通りから離れた路地裏にて、それは起きた。
先日、出没していた指名手配犯が死体で発見されたのだ。
凶器は不明。唯一男の腹に何かが貫通したような穴が出来ていたが、その形に合う物が解らなかった。だから警察の方も捜査が上手く進行しない。
「うーむ……」
リディア・アイランド都市部第三区特別捜査官の天川(あまかわ)は顎に手を起き死体の近くを観察していた。周りにあるのはこの男が使っていたと思われる銃の弾、不自然に曲がっていたので、何かにぶつかり落ちたと考えるのが妥当であろう。
しかし、他に不審な点がない。昨日の雨で流れたのかも知れない。
「昨日が晴れだったらもっと楽に捜査が進んだかもしれんのにな~」
そう言って天川は胸ポケットから煙草を取り出し、ライターで火をつける。
どこであっても煙草とマイペースは忘れない。これは彼の決めたルールである。
「しっかし酷い有り様だなこりゃあ」
今いる場所のすぐ近くのビルの壁には、殺られた時に飛び出た血が黒ずんでいた。犯人の血でないくらいは予想できる。
「まさかとは思うが、能力者じゃあないだろうな?」
天川は自分の疑問を水溜まりに映る自分に聞いた。
勿論返事は帰ってこない。
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