満天の星空の下(短編)

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 『こんな綺麗だったかなぁ』  子供の頃見た星空、今見ている星空。何も違いがない。風景は見るものの心次第でこんなにも違うものだろうか。  会社をリストラされ、妻に離婚を突き付けられた彼。四十年、家族の為、会社の為、そして何より自分の為と言い聞かせて走り回った彼にはもう何も残っていなかった。涙がとめどなく溢れてくる。  『そうかぁ。お前は俺を待っててくれたんだなぁ』  震える小さな声で彼は呟いた。 彼が星を見なくなってる間も、星達は毎日輝き続けてきた。何も残ってない彼には、子供の頃から今までずっと待っていてくれた親友のように見えていた。  「何泣いてんだ?子供の時みたいにまだお前には将来があるだろ?やることがあるだろう?また待っててやるから、やることやったらまた会いに来いよ。」  『うん、うん、うん、うん』  彼は何度も頷いた。聞こえるはずもない星達の激励に。日本に帰ろう、帰って仕事を探そう。そして、妻に帰ってきてもらおう。次の日彼は帰国の路につく。  みなさんも忘れてた友人、知人、恩人いないでしょうか?たまには昔を思い出してみませんか?もちろん、満天の星空の下で。
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