満天の星空の下(短編)

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~眩しい。いや、そんなはずはない。私は今、目を閉じているのだから。~  南国の突き刺すような太陽の光は一人の中年男に襲い掛かっているようだ。彼は五十代半ば、普通の中年、団塊世代というやつだ。まるで南国など似合わない彼は何故ここに?何を思って?  『もう二時かぁ。』  もう?彼は もう という表現を疑問に感じた。もう という言葉を使う程時間に迫られていないことを思い出した。そして、真っ白だった肌が赤く熱を持っていることを確認して自分が南国に来たことを思い出した。  小さなバッグから地元のフルーツをだし、噛り付いた。みずみずしく、甘酸っぱい南国の味だ。フルーツを食べ終わるとバッグを背負い、砂浜へ出る。太陽の光を浴びた砂は、サンダル越しにも高温であることを十分に感じさせてくれる。ゆっくりと、白い砂を確かめるように歩を進めた。   一周何キロあるだろう?多く見積もっても五キロもないこの島。いるのは彼一人だけ。昨日日本から来たばかりの彼は朝一からこの無人島へ足を運んでいた。
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