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どのくらい時間が経ったろう夕陽は完全に沈もうとしていた。沈む夕陽と沈んでいる中年。空にはうっすらと月と星が見えはじめていた。 たが彼は、一向に動かない。彼が見つめる先には夕陽はもうなく、暗闇が迫ってきた。哀愁漂うその背中は闇に飲まれ、静かな夜が訪れた。
彼は何かに気付き空を見上げた。海に映った光。それは月だった。 澄み切った空気のおかげなのか、小さな星まで見てとれる。宝石箱をひっくり返したような なんてものではない。宝石は星の一部が落ちてきただけにすぎないのではないか と思わせる数、輝きであった。
『すごい。。。星なんて久しぶりだ。』
彼が二言目に発した声。彼は驚いたようだった。綺麗な星空にではない。最後にいつ星空を眺めたのか思いだせなかったのだ。必死に思い出そうとする彼は、子供の頃から星空を眺めていないことを思い出す。波の音が邪魔をしてはっきりとは思い出せないが間違いない。
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