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通常の公園とは変わらないものの、強いて言うならばその面積の広さ、遊具の数は並、またはそれ以上のものだった。
狭くもなく、しかし広大と言う程広くもない。
一般人が利用する程度に造られた、安全性を重視している適度さ。
それは一つ一つ手に触れて確認する事で理解出来た。
大の大人が身を潜ませる事も可能な、滑り台の下方に設けられているスペース、円形の筒型で、中に入れば音を反響させるであろう蛇の如くうねりを見せるトンネルなど。
隠れるには打ってつけの遊具が意外とあり、敷地内に存在する場所を隅々まで調べるが、人を見つける事は愚か、自分の呼び声に反応を示す者すら居ない。
志季は無意識に口許を歪めた。
「くっそ、意味分かんねー。アイツも何で居ないんだよ……。あれか? 実は夢か何かで、眠り苦しむ俺を眺めほくそ笑んでるってんじゃ」
柄にもなく独り言を呟き眉間に皺を寄せる自分に、志季はそれこそ夢であって欲しいと心底切に願った。
空は驚く程に快晴で、鬱蒼とした茂みの木々から聞こえる蝉声に、思わず舌打ちを鳴らす。
額から滲む雫に気付くと、若干癖の付いた前髪を僅かに掬い上げ、欝陶しげに汗を拭った。
取り乱すなど、我が身のプライドを傷付ける行為に値する。
孤独感に襲われなくもないが、それも自分しか居ないとなれば、叫ぼうが喚こうが、それが無意味と化す状況になる事は明らかだった。
――さて、どうするか。友人も居ず、時間も不明。今居る場所が何処なのかも分からない。
改めて冷静に万遍なく辺りを見渡してみれば、自分が倒れ伏せていた滑り台の横から、そう遠くない奥に、ふとアーチ状の色鮮やかな花で飾り立てられた細道が目に入る。
オンラインゲームでプレイする際にあるよくある話だと、志季はつくづく思った。
思考力が十分に機能しない時は、自らが危機的状況に陥っている場合や不安と動揺に神経を張り巡らせている場合。
緑林と混合してしまっている様にも思えるそれは、よく周囲を観察すれば直ぐに発見出来る、見落としの仕様がないもの。
この奇妙で不可解な現状から込み上げて来る様々な感情を、一体誰に不満としてぶつけてくれようか。
「――こんな手の込んだ嫌がらせした奴、見つけ次第殴り飛ばしたいんだが」
足は自然と一つの方向に向かい、引き寄せられるかの様な感覚で一寸の狂いもなく歩み出していた。
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