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「…それより、あんた今家に帰らないって言ってた?何、家出んの?」
ボソっと言っただけなのに…地獄耳か。
「出ないよ!朝早いと、隣との行き来が面倒だなって思っただけ!何言ってんのよ。」
「あそ。まぁ、あんたの人生なんだから好きにしていいんだから。出ていくなり、何なりしてくれ。」
また始まった。
子離れ出来ているというか、子育てに大雑把というか。母さんは朝起きた時と酔った時、こんな感じに私に自立を勧めるようなことを言う。
私に早く家を出てほしいのかと、本気に悩んだこともあった。ただ、何度も聞いてる内に耳が慣れちゃって、今ではすっかり気にすることもなくなったけど。
「はいはい。時期が来たらそうさせて頂きますから。」
「左様ですか。うむ、では母上様は寝かせて頂きます。」
「はい。おやすみ。」
母さんは頭を掻きながら、毛布をズリズリと引きずり歩き始めた。
歩く足は重たかった。
「あ…」
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