プチ家出

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「ただいま~…う!!くさっ!!………はぁ。」 いい加減分かってるはずなんだけど、朝一番から臭いでチャンポンとは最悪だ。 新学期が始まり、辺りの桜はすっかり落ちて、青葉が目立つようになってきた5月の終わり。 外はこんなに清々しい風が吹いてるのに、なんでこのウチは毎日こんな臭いしかしないんだ。 と、他人事の様に言ってはみたが、嫌でも何でもここが自分のウチだとふと我に返る。 またため息をついて、うなだれてみた。 酒と煙草の臭いにまみれながら奥へと進む。 すると、前方左隅の赤いソファから微かなイビキが聞こえた。 そっと覗いてみると、そこには見慣れたパーマ頭が横たわっている。 「はぁ…またこんな所で寝てるし。風邪引いても知らんよ。」 こんな臭いだけで酔いそうな環境下で平然と寝ているこのパーマ頭こそ、紛れもない私の母親…と改めて考えてしまった。
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