絶体絶命

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その時、風が吹いた。強い風ではなかったけどその勢いで顔を覆っていた新聞が飛ばされた。 「あっ」 学校の屋上で昼寝をしていたのは、見知った人物だった。 「黒崎君」 自分に教科書を貸してくれた人だった。そのお礼を言いたかったが 「寝てるのを起こすのもなんだし」 今言わなくても放課後に言えばいいので、そのまま寝かせてあげることにした。 改めて見ると、やはりその容姿は飛び抜けている。 全体的に細目のラインに長い手足、端正な顔立ちは同年代よりも大人びて見える。 寝ているためか、今は少し幼く見える。けれどそれは子供っぽいのではなく、むしろ普段見せない表情を自分だけ見ることができた、なんて風に思える。 「これが、いわゆるギャップ萌え?」 なんてことを思っているとさっき風に飛ばされた新聞を見つけた。
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