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「ふぁぁああ~~~」
『ジリジリジーーーー』
部屋の主の起床後に仕事を始める目覚まし時計。
「うっせ」
寝惚けた頭で目覚ましを止めに掛かる。
目覚めは最悪だった。
元よりこの部屋の主たる少年――上代 将紀(かみよ まさき)――は寝覚めが最高に悪い。
いかに天気が良好であろうとそれは覆らないこと。
「かったるい」
頭をポリポリと掻きながら将紀はベッドから降りる。
今日は1週間の始まりたる月曜日。
少年は手早く学校指定の制服――学ラン――に着替えを済ませると自分の部屋を出て、家族の集まる階下のリビングへと足を進ませる。
「おはよう。お兄ちゃぁ~ん」
真っ先に少年を出迎えたのは彼の妹『上代 悠(かみよ はるか)』である。
肩まで掛かるショートの茶髪で、髪の毛が一本触角のように目立つ。
そして彼女もまた学生なのでセーラー服を着ている。
そう、セーラー服を着ているはずなのだが……
「悠よ、兄として確認しておきたい。それはセーラー服だよな?」
「うん。そうだよ~」
なんとも間延びした返答。
将紀はペースを崩されそうになるも、そこは何年も同じ屋根の下で暮らした間柄。
気をしっかり保つ。
「ならば問いたい。なんでセーラー服の背中に羽が取り付けられているんだ?」
妹の困った点。
妹のファッションセンスの奇抜さだ。
別に誰がどのような服を着ていようが一向に構わない。
だが、ここに至っては気にできないレベルをもはや超えている。
まず、セーラー服なのは当たり前だ。
しかし問題はその背中の部位。
天使よろしく可愛らしい羽が備え付けられている……という訳では決してない。
学校の制服を改造しているという点だけを見れば普通は許されざる行為だが、その前にそれ以外にもツッコミ所が満載すぎる。
彼女のセーラー服に備え付けられている羽、それは所謂悪魔をイメージしたものであった。
「どう?」
「言える事はただ1つだけだ。外しなさい」
「え~っ!? せっかく作ったのに~」
とブーたれる悠。
更に足下に置いていたのだろう悪魔が持っていそうなイメージの大きめのフォーク。
むしろ、悠の身の丈を超えてしまっている。
「んなもん作ってんな!!」
将紀の怒声が響く。
結局は悠を説得するのに30分近く労したのであった。
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