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・  歩いて10分程で行き着いたそこは、俺の唯一落ち着ける場所だった。何故そに着いたのかは、俺自身わからないが……。なんとなく足が勝手に向かっていた。 「………ッ」  暫くその場に座っていると、涙が自分の頬を伝っているのに気付いた。  やっぱり、前に進めていない。俺はお前がいないとダメで、なんのために生きているのかもわからなくて……。自分の腑甲斐無さにまた涙が零れる。  あの日の事を思い出すと、後悔の波が押し寄せる。  今ある目の前の波は凄く穏やかなのに、少し不祥事が起こると暴れまわる。  普通にしていれば、普通でいられる。でもそこに少しでも亀裂が入れば……。だから俺とお前は離れ離れになって、それで……。 「緋柚梨……ッ」  お前を思い出すだけで何故あんな事になったのか、今でもわからない。ただ、俺の所為だって事だけ。  一生守ってやるなんて格好の良いこと言っておきながら、何一つ守れちゃいない。  頭をそっと撫でるような潮風は気持ちが良い。心のモヤモヤが風に乗ってスッと流れ出るような感じ。  それと同時に恐怖がやってくる。お前といた思い出が、記憶が、感情が、人を愛する喜びが、全部流れてしまいそうで恐い…。 .
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