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「ご、ゴメンなさい。邪魔しちゃって」
ただ一言、今にも消えそうなか細い声で呟いた。
「別に。邪魔ではないから大丈夫だけど」
俺がそう言うと、その女は『良かった』と安心したように呟いた。すると突然『あっ』と何かを思い出したように声を漏らした。
「私、海神緋柚梨(ワダツミ ヒユリ)です。一応、同じクラスなんだし覚えといてね、久遠悠尋くん♪」
俺はなんだか不思議な感覚に胸が苦しくなった。
「緋柚梨……ッ」
同じ名前…ただそれだけなのに、昔の緋柚梨を思い出して更に胸が苦しくなった。
突然肩を掴まれビクッと驚いた目を向けたが、やがて俺の様子がおかしいと悟ったのか「大丈夫…?」と心配そうに顔を覗かせた。
「あっ、ゴメン。大丈夫だから」
ハッと我に返った俺は、動揺と不安を隠せぬまま背を向けた。
「大丈夫そうには見えないけど…。言えないなら、無理にとは言わないけど、私で良かったら話しだけでも聞くよ?」
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