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「で、だ。おまえ…今でも元の世界へ帰りたいか?」
幼い頃、アンシェロントがしょっちゅう言っていた。
暗い顔をして、お家へ帰りたい、と。
それを幾度となく聞いたジェルブロートは、二人きりの時のみ、アンシェロントを抱きしめてやった。
だが、それも年を経るに連れ、少なくなり、ついには言わなくなった。
言わなくなった事はそれはそれで良いことなのだろう。
だが、ジェルブロートにとっては、心配事の一つでもあった。
「バカだな、ジェロ」
「…………」
「あたしの帰る場所は、ジェロのところだけだよ? あたし、この世界の人間だもん」
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